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□発端□
■発端は単純。『吉原御免状』という隆慶一郎氏の小説を読んだことに始まる。この小説は、週刊新潮に昭和59年の9月27日号から昭和60年の5月23日号まで連載された同氏の第一作となる処女小説。吉原を舞台に繰り広げられる吉原者と柳生の闘争を核に「吉原」自体の存在をひとつの歴史的な仮説の上で展開してみせたいままでにない時代小説といえる。週刊新潮に連載されているときから、毎週楽しみで仕方なかった当時のことが今も思い出させる。それまで、漠然と江戸の色街としてしか、自分にとってはなかった、吉原の存在が全く異なった様相とともに自分に迫ってきた。この時代小説のもつ魅力が、司馬遼太郎氏の歴史小説に遭遇したときとはまた、異なる世界を開いてくれたことが昨日のように感じられる。以来、私は、隆氏の全著作を読みあさることになる。確か、自分にとって、この小説は、昭和57年の6月から昭和58年の12月まで読売新聞に連載されていた司馬遼太郎氏の『箱根の坂』の上巻〜下巻が講談社から59年の春から夏にかけて出版された時期の後でもあり、一人の作家の誕生を告げる小説と一人の作家のほぼ最後の小説(司馬氏の場合は、この後に『韃靼疾風録』があるが、その前作となる)が期を同じくして、並んだという印象がある。
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書籍■『吉原御免状』(隆慶一郎著、新潮社刊、初版・昭和61年2月25日)この本は、同氏の処女作であるだけでなく、なんと同年の第35回上半期直木賞最終選考にも残った。惜しくも受賞作とは、ならなかったが、その創作の着眼点と筆力には、高い評価がなされた。この時の受賞作は、皆川博子氏の『恋紅』(なんと、同じ新潮社刊)。隆慶一郎については、作家リンクへ。
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