| 副題に“山田教授の生き方・考え方”とあるように、この本は、城山氏が師事した一橋大学の山田雄三教授を「自分の価値観を形成してくるのに欠かせなかった存在」として語ることで、城山氏、自らの創作の原点や姿勢を浮き彫りにさせる作品といっていい。また、同時代の経済学の周辺や時代の雰囲気といったものを嗅ぎ取るのにも最適な読み物となっている。60年安保、学生運動からのこうした視点での作品がもっと書かれていいと思えるのに、こうした作品が著者の肉声に近い形でまとめられることは案外少なく、残念に思うのは、その後の世代に属する私たち世代には多い。この本自体は、氏69歳の作品となる。やはり、人間このぐらいの年齢になると自分の決算とでもいえるものをまとめる気になるのかもしれない。もちろん、この本は師への追悼の意味もあり。時期をそうした時間軸で見るのだけでは不十分なことは明らかだが・・・。 |
作家コーナー情報:■サイト“城山三郎と芥川賞著目一覧”が城山三郎については詳しい。■師である山田雄三教授の著作を読みたい方向きには、『価値多元時代と経済学』(岩波書店、1994年刊行)がお勧め。また、山田教授自体は、福田徳三教授に師事した。 |